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その他 / その他 / 川口衞
- 1988
- / 埼玉県加須市(利根川河川敷)(遊泳は,加須市の5月初頭の年中行事になっている。)
100mジャンボ鯉のぼり
埼玉県の加須(かぞ)市は,武州鯉の名で知られた鯉のぼりの産地である。その加須市の市民たちが,町おこしのために手分けをして布を裁断し,縫い合わせ,着色を施して、長さ100mの巨大な鯉のぼりを作った。次に,お披露目したいということで,鯉の体内にワイヤロープを通し,洗濯物のようにクレーンで吊り下げてみたところ,風にあおられて,あっという間に大きく裂けてしまった。意気消沈した市の青年会議所のメンバーたちが,私の研究室へ相談に来られたが,話の顛末に耳を傾けているうちに,この問題は構造設計の原理と技術で解決できそうだという実感が湧いてきた。問題の本質は次元(大きさ)であり、次元解析での解明が可能だと思ったからである。解析の結果、この鯉は適切な処置を施せば、通常のそよ風(2~3m/秒)で、普通に泳ぐことがわかり、強度、口輪、揚げ方などのディテールについても適宜指導をした結果、みごとに利根川上空に遊泳させることが出来た。その後、ジャンボ鯉のぼりの遊泳は、この町の年中行事にもなり、また、ハワイ、カイザースラウテルン(独)にも遠征、優雅な遊泳を披露している。